面の部分には、面金・突き垂・天地・内輪・用心垂・面布団があります。突き垂は、通常牛革クロームか鹿皮で、天地・内輪・用心垂は、紺木綿かビロードで出来、面布団は、紺木綿に刺子生地か紺木綿に鹿皮で、その中身は、白綿かフェルト、芯材には、純毛毛布や毛氈の入った品もあり、手縫かミシン縫で刺してあります。仕立ての工程は、通常面金の台に、通気性の良い稲藁を麻紐で肌巻きし、突き垂を顎巻革で取り付け、次に面金側に面ぶち革を、続いて天地、内輪、用心垂を、最後に面布団を取り付け、面布団側に残った面ぶち革を綴じて、面ぶちをカシューか漆で塗り上げます。
以上のように、通気性や安全性に心配りをしていますが、突き垂は一番最初に取り付けられていますので、大事に扱わないと痛み具合によっては、全部取り外さなくてはならなくなることもあります。また、面を付けたり、はずしたりする時は、突き垂を持たないよう注意して取り扱って下さい。決して突き垂を持って振り回したり、折り曲げたりしないで下さい。尚、革類は水分に弱く変形する恐れがありますので手入れは充分に、風通しの良い日陰等に干して乾燥させて下さい。
胴胸の芯材には、毛布・フェルト・綿を使用し表革と裏革を合わせて、飾り糸で雲飾り等を入れます。刺しの部分には、詰(ベタ)刺し・蜀紅(しょっこう)等を入れた高級品もあります。
胴台は、竹に和牛あるいは水牛の生皮を貼った革胴、紙製のファイバー胴・プラスチック系の胴等があります。革胴の場合、裏竹の本数により一般的に43本立・50本立・60本立等の種類があります。竹を曲げ、琴糸で結び合わせ、和牛あるいは水牛の生皮を貼り、表裏ともに漆あるいはカシュー塗料を塗って仕上げてあります。昔は、殆どが呂色(黒)塗りでしたが、現在では多種類の特殊塗りがあります。裏側は朱塗りが一般的です。
小手には、小手頭・けら・手の内・筒と小手布団があり、小手布団部分と小手頭・筒で結合させて作ります。小手頭の中身には、鹿の毛か化学綿が入っており、使い込むと抜け出て少なくなったり、中身が移動したり、綿がつぶれたりして小手頭が薄くなったりします。この場合には、必ず専門店にご相談下さい。けらは、1段か2段で仕立て(小中学生用ではないものもあります)筒を作ります。また手の内には茶か白の鹿革、あるいは合成皮革を使います。小手布団は、手縫かミシン縫で刺し、2本の小手紐にて編んでおります。
垂には大垂・小垂・前帯・垂ひも(垂帯び)があり、通常芯に白綿とフェルト芯材を使い、大垂・小垂のヘリを紺鹿革等で付け、飾り等を入れて帯と結合します。刺しには、手縫とミシン縫がありますが、あまり硬くなく適当にやわらかさがあるものをおすすめします。
道具袋は運ぶためのものであり、しまっておくものではありません。仕方なくしまっておく時は、カビさせないよう、乾燥剤等を入れ湿気対策を行って下さい。また、時々剣道具を取り出し、お手入れに心掛けて下さい。
1.垂をくくり付けた胴を入れます。
2.面を入れ、両サイドに小手を入れます。
3.たたんだ剣道衣・袴を上方にしまいます。
剣道の服装は剣道衣・袴よりなり、この服装は昔の鎧下着と同様に活動しやすく丈夫にできております。少年用は白地に黒糸刺(六三四刺)に紺袴の姿が一般的であり、有段者は二重刺または総手刺の稽古着に、袴は厚地の木綿仕立てのものが多く着用されております。
袴は古墳時代、男子が着用していた衣褌が袴の起源とされています。袴はその後変遷を経て、奈良時代以後に唐風をとり入れた表袴がつくられ、中世以後は細い四幅袴、近世初期には長袴が好まれ、元禄時代になって現代剣道その他の武道に用いられている馬乗袴が生まれました。
袴には前に五本の襞がありますが、これは先人が日常の心掛けとして「五倫五常の道を訓したもの」とされています。すなわち、「君臣・父子・夫妻・長幼・朋友」「仁・義・礼・智・信」などの道を、袴をはく度に頭に浮かべ、心に刻むようにつくられたものといいます。折目正しいという言葉も、そこから生まれたと解されています。また、後ろの一本の襞は男子として二心のない誠の道を示したものです。
●袴の種類=表(うえ)袴、大口(おおくち)袴、指貫(さしぬき)袴、狩衣(かりぎぬ)袴、四幅(よの)袴、長(なが)袴、小(こ)袴、半(はん)袴、平(ひら)袴、野(の)袴、裁付(たつけ)、行灯(あんどん)袴、馬乗(うまのり)袴