毛氈は、羊毛・ヤギ毛・ラクダ毛などの獣毛の繊維に湿気、温度、圧搾、摩擦を加えて平板状にからみ合せて作り、一種の織り上げた様な物として、古くから中国より渡来した高級な敷物です。
多くは、深紅色に染められて緋毛氈と云われていますが、中には藍染めにした濃紺色のものや、花模様などを捺染した花毛氈もあります。毛氈の使い古したものは、真綿と共に組合せて、昔より手刺の剣道具布団の芯材として使用されて来ました。
毛氈入り剣道具は軽く、使用すればするほど体に馴染み、衝撃吸収性・肌ざわり・耐久性等は他に類するものがない使用性を誇っています。しかし、残念なことに現在では、古い毛氈は極めて手に入りにくくなっています。
当社ではこの毛氈を手刺剣道具に使うことにより、軽く、衝撃吸収性、感触製、耐久性に優れた布団を仕立てます。
使用すればするほど体に馴染み、また形もつきやすいので防具をつけた時の立ち姿は大変美しく仕上げることが出来ます。
鹿皮は柔軟性に富み、通気性、吸湿性にすぐれています。
藁を燃やし、その煙で鹿皮を染色します(燻製状態)。
煙の成分の中には油分やタンニン他、有効成分が含まれており、それらを吸収し、通気性、吸湿性に加えて耐水性、安定性が生じます。
用途…主に甲手の手の内、突き垂裏等に使われます。
鹿皮を藍又はインディゴピュアで染色します。
染色する事により一層丈夫になります。
用途…主に面帽子、垂帽子、突き垂、甲手等に使われます。
当社ではこの鹿革の中でも『チビ小唐』と言うキメが細く、柔らかく、そして丈夫な最高品質の鹿革を使うことにより大変気品ある防具に仕上げることが出来ます。
きれいに刈り取られた鹿毛は一本一本がパイプ状になっており軽く、通気性、衝撃吸収に優れています。(パイプ状の空気層が秘密です)。お使いいただくうちに手の形に添って体型(手)に馴染んでゆきます。
当社ではこの鹿毛を使うことにより、甲手頭、全体の軽さ、手首の柔らかさや返りには追従性が他の芯材に比べ抜群の効果を発揮するように仕上げることが出来ます。
藍染めとは藍液でかせ糸・木綿布地・紙などを、濃紺・紺・藍・納戸・はなだ・かめのぞきなどの色に染めることを言います。又、藍は紅花・紫草と共に古くから用いられた植物染料です。『延喜式』によれば、当時すでに諸国で栽培されていました。しかし、庶民生活に藍が重要度を占めるに至ったのは、木綿の普及と関連し江戸時代以降の事です。
藍染めは布地を強くするので、タンニン黒染(どぶ染)のような布地を弱くするものには、古くから下染めに使用され、丈夫さを要求するものでは、絣・作務衣・剣道衣・野袴・剣道袴(馬乗袴)などに使用されてきました。
色は摩擦以外の洗濯や日光に堅牢で、汚れが目立たず、南方では蚊・蝿などの害虫避けにもなると言われています。
藍の種類には、インド藍・山藍・大青・琉球藍などがあり、その色素は化学名をインジゴチン(indigotin 青藍)と称し、純粋なものは美しい黒青色か青紫色の針状結晶で、粉末は濃青色です。
青藍は不溶解性でハイドロサルファイトなどにより還元されてインジゴホワイトになります。これはアルカリ性の水には溶解して黄色となります。この溶液に浸して吸収させ、引き上げると空気に触れて酸化してもとの青藍になり、これを何度も繰り返し濃度を濃くしていき濃紺色に染まります。
当社では厳選された正藍染の紺反生地や紺鹿革を使うことにより、防具や剣道衣、袴などに濃藍色豊かなものに仕上げることが出来ます。
面金をアイ・ビー・ビーにすると最適重心面になります。
面は剣道家の大切な頭部を保護します。特に面金は重大な事故を防止するものとして、より良い面金が求められています。
面金はいたずらに軽くすれば良いとは限らず、軽くすればする程に、竹刀の打突による衝撃力が強く感じられます。けれども重い面金は頸椎部にかかる負担が多くなります。
この両者相反する特性の良いところを取り入れて、長年の研究開発・実験を重ねて完成したのがI・B・B・面金(最適理想重心面金)です。
I・B・Bとは、アイデアル・ベスト・バランスの略称で、面に於ける最も理想的な位置に重心を置くように設計された面金です。従来の当社の面金に比べて、重心位置を上方に17m/m、後方に7m/mずらすことに成功しました。
I・B・B面金では面の重心と頭部の重心を一致させる事により、面との一体感を更に増し、体の動きに無駄が生じません、強度では直進突や圧力に対して、物見部分(目の当たるところ)で1m/m拡大するのに、当社従来比でジュラルミン面金11.5kg、チタン面金25.3kgも強度を増大させており、耐衝撃力による力積値(痛さを感じる力の値)の減少に多いに役立っています。
最高の技術により生まれた新しい面金を是非ともお試し下さい。
当社はI・B・B面金を使うことで、面布団のバランス計算も考慮に入れ、面を仕立てておりますので更に使い易い面に仕上げることが出来ます。
現在 爪刺は、ほとんど作られておりません。しかし私たち松興堂のこだわりは、刺し方の製法を本刺しではなく爪刺にて行うことです。爪でおさえながら刺す「爪刺」というかなり凝った刺し方で、真綿が緩まないので、エアクッションと同じような感触を体感できます。
親指と人差し指の爪で、刺すポイントを押さえて締め込みます。締め込んだ部分を、緩まないように糸を引いて刺したものが「爪刺」です。裏側の糸目を小さくして。しっかりと布団の中に糸を緩みなく締め込んでいます。
手で面布団の刺方向の直角に触れてみて下さい。布地は触れて刺目糸には締め込んだ状態で糸に触れることがありません。糸目を傷つけることなく丈夫で末永くお使いいただくことができます。
松興堂には守りたい伝統があります。「ウチではあくまでも『防具』であることを大切に。安全性を一番に考えて製作しています。『防具』は身を守る物、そのために何をなすべきか。いたずらに軽量化に走らず、布地・皮革、そして綿・毛氈といった吟味した基礎素材を伝統に基づいた刺し方法、組み立て方法で時には『柔らかさ』『硬さ』といった感触に至るまでこだわって製作しています」 軽量剣道具の流行からか、安全性を第一にうたう防具には「頑丈」「重い」といったネガティブなイメージがつきまといがちかもしれない。しかし、それは大きな間違いです。「剣士の身を守る安全な衝撃吸収性を求めても、厳選された素材や、刺しの技術、組み立てのバランスなどで充分に使いやすさは実現できます」「なるべくシンプルに美しく作っています。そしてシンプルに作ることこそが一番難しい」と考えます。
私たち松興堂のこだわりは、剣道具とは防具であるということです。最近では技術革新がめざましく、防具の軽量化が主流となりつつあります。私たちはフルオーダーメイドによる仕上げでお客様のご要望にあった商品をご提供しております。私たちの目指す商品価値は、人間の五感で感じていただくことであり、他にはまねのできない違いです。そのため伝統工法、素材に徹底的にこだわっています。本物志向のお客様は是非一度、お試しください。